友人である、ブラインドライターの松田昌美さんが、このような記事を書かれていた。

私の娘と同じ9歳の私の友人である犬は私にはなんだかとっても愛おしく感じられていて特別だった。
本来リタイアをする時期より早くみんなとバイバイすることが決まったのは最近のことで。
今日は最後に会いに来てくれた。
まだまだ元気たまから全然事実が受け止められなくて。だけどその時は刻一刻ときているのかと思うと本当に辛くて。

なんてこんなに無情なのかな。。。ぼんやりしてしまうばかり。

また明日ねって何にも考えてなくて
また明日ねって言ったそのすぐあと
また明日ねって言えるきみがいてくれるって気づく
会えないと分かっているまたねって言葉
冷たくて。
本当はずっと会える
またねって。ずっと言っていたいのに・・・

ありがとう。素敵な日々を本当にありがとう。
私の大切な友達を守ってくれて
一緒に歩いてくれて本当にありがとう。

これからもずっと友達だよ!またね!また絶対会おうね。また生まれてきてね。約束だよ。


そう、盲導犬は引退すると、共に長く過ごした視覚障害者とは、一緒にいられない。そして、2度と会えないのだ。

引退犬飼育ボランティア|ボランティア|日本盲導犬協会


わたしは、引退した犬と特殊な環境で共に暮らしたことがある。そのお話を、書いてゆくことにする。


<シェリーとの出会い>

わたしは、わたしが勤めている動物病院でその「引退犬」と出会った。動物病院は、引退犬のボランティアをしていた。

彼女の名前は「シェリー(仮名)」。出会ったとき、彼女は12歳だった。引退してすぐに来たということだったので、12歳近くまで、盲導犬として活躍していたようだ。

出会ったとき、シェリーは食べることと散歩が大好きな、「犬」だった。しかし、動物病院に来た当初は、コマンド(命令)で動く、まるでロボットだったと、聞いた。動物病院スタッフと関わる中で、少しずつ本来の犬らしさが出てきた。しかし、他の院内犬と遊ぶことはないし、おもちゃにも反応しない。盲導犬として生きてきた彼女には、当然のこと、なのだが…他の院内犬をみるたびに、複雑な気持ちになった。

シェリーには、大好きな条件を持つ人がいた。
「30代の背の低い男性」「車に乗ること」 このどちらかで、彼女は興奮する。そして、ちょっと、残念そうになるのだ。

「きっと、元の飼主さんが、車で連れ歩いている人だったんだね」と、スタッフと話していた。

シェリーは苦手なことがあった。それは、ケージに入ること。普段鳴くことがない彼女が、ケージに入ると、ほんとうに悲しそうに鳴くのだ。盲導犬は、その仕事ゆえ、ケージに入ることがないのかもしれない。


<老いゆくシェリーを最期まで看取る>


シェリーは若いときのトレーニングの影響か、気管が弱く、「ガーガー」と呼吸音がすることと、皮膚が弱いくらいで、なかなか元気に過ごしていた。幸い、彼女が住んでいるのは動物病院。なにかあっても、すぐに対応ができる。

血液検査をして、甲状腺機能が低下していることがわかったり、気管支の薬を飲ませたりして、それでも毎日シェリーは、シェリーなりに楽しく過ごしていたと思う。

しかし、老いが徐々に目に見えるようになる。下半身が弱くなった。支えないと階段を昇れなくなった。尿漏れをするようになった。あれだけ大好きだった食事に食べムラが出てきた。そして、腎臓が悪くなってきた。

点滴をするときには、動物は動いてしまうので、どうしてもケージの中に入れる必要がある。大嫌いなケージだったが、シェリーはすぐに慣れた。ケージ越しにじっと彼女に見つめられると、「ごめんね」と思っていた。点滴が終わると、嬉しそうにケージから出てくる。

そうして、何度かこのようなことが続いた後。徐々にシェリーは立てなくなった。抱っこをして階段を降り、散歩に連れて行く。シェリーは外が好きなのだ。

そう、大型犬が立てなくなると、とたんに世話が大変になる。寝返りをこまめに打たせないと、すぐに褥瘡ができてしまうのだ。この介護を、ご自宅でするとなると、ほんとうに大変だ。大型犬ゆえ、動物病院に支払う費用も高額になるだろう。シェリー、ここが動物病院でよかったね。院長先生に感謝するんだよ。


食べなくなり、飲まなくなった。点滴を打つ日々。もう動けないので、ケージに入れる必要はないが、日に日に弱ってゆくシェリーを見ているのは辛かった。でも、彼女には笑顔で明るい声で話しかける。そうすると、頭がぼんやりしているシェリーの目が、少ししっかりするのだ。

「あと、2,3日かな。」最期の時に近づいていた。その日休日だったスタッフが、様子を見に来てくれた。シェリーはその方が大好きだったので、わたしたちにはあまり反応がなくても、その方には敏感に反応した。目にすこし、光が戻ったのだ。こういう状態でも、きこえるし、においもわかるのだな、と思った出来事だった。



その翌日、シェリーは亡くなった。見つけたのは、わたしだった。シェリーはペット葬儀屋さんに焼いていただいて、その大好きなスタッフのお宅で眠っている。14歳。大型犬では長生きしてくれたと思う。

ありがとう、シェリー。あなたのおかげで、犬についてたくさんのことを学んだよ。飼主さんの代わりにはなれなかったかもしれないけど…ちょっとでも楽しく過ごしてくれていたとしたら、嬉しいな。

03
シェリーが温かいようで、いつも寄り添う猫。シェリーは微妙に嫌なのだけれど、許してあげている。


以上、「盲導犬って引退したらどうなるの?-一緒に過ごした2年のお話-」でした。

記事を読んでくださって、ありがとうございました。いつか、お目にかかりましょう!